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ビーティングで虫探し

季節は冬。寒い時期は虫を見つけるのが難しくなります。過去に竜洋昆虫自然観察公園マガジン【こんちゅう館スタッフの生きもの日記|竜洋昆虫自然観察公園】ではいくつかの方法で、寒い時期の虫探しのポイントを記事にしてきました。

朽ち木を割ったり、落ち葉の下のいきものを探したり、いろいろな物をめくったりと様々な方法があります。今回はしげみなどに隠れた虫を採集する「ビーティング」という採集方法を紹介したいと思います。


ビーティングとは

ビーティングとは、布や網などを受け皿として用意し、しげみや木の枝を叩くことによって、隠れている虫を落として採集する方法です。ビーティングという名前は英語のbeatが由来で、叩くや打つなどの意味があります。

ビーティング採集

木の葉や枝を利用する虫は多く、カミキリムシやハムシなどの枝や葉を食べる昆虫の他にも、ハエやクモなど様々な虫を採ることができます。私はハエトリグモやテントウムシなどを狙うことが多いです。

一見、虫が居なさそうな場所でも、ビーティングをしてみるとたくさん落ちてくることがあります。虫を見つけてから落とすのではなく、見つかっていなくても落とせるのが面白いポイントです。

必要な道具

必要な道具は2つだけです。「叩く棒」と「受け皿」さえあればできてしまいます。

ビーティングセット

叩く棒はある程度頑丈で、叩いたときに壊れないものであれば大丈夫です。叩ければいいので落ちている固めの木の枝などでも問題ありません。

受け皿にはネットが使われることが多く、網目から虫が逃げていかないくらいの細かさで、強度があり簡単に破れないものを使うとよいです。ツルツルと滑りやすい素材だと、落ちてきた虫がネットから転げ落ちてしまうこともありますので注意が必要です。ビーティングネットは昆虫の専門店などで販売されています。

ネットは自作することも可能で、こだわるポイントが多くあります。大きさや重さ、たわみ具合などです。小さいと虫が逃げやすいため、ある程度の大きさが必要です。重いと採集中に疲れてしまいますので持っていて負担にならないくらいの重さがいいでしょう。少したわみがあるほうが、虫が逃げにくくなります。

簡易的なビーティングセット

専門道具を使わずにビーティングを行うこともできます。上記の画像の受け皿は100円ショップで購入できる白トレイを使っています。虫が見やすく、軽く、ある程度丈夫なので扱いやすいです。他にも100円ショップで買える洗濯ネットを使って自作することもできます。いきなりこだわる必要はないので、まずは手軽な物で挑戦してみましょう。

注意点

しげみにはハチやケムシ、ムカデなど毒のあるいきものが潜んでいる可能性があります。毒のあるいきものが採集されたら、慌てずに触れないようにしましょう。

ハチに刺されたりムカデに噛まれたりした場合は毒を絞り出しながら水洗いをします。患部には抗ヒスタミン剤、ステロイド剤を含んだ塗り薬を塗って様子を見てください。アナフィラキシーショックが疑われたらすぐに病院へ行くようにしましょう。

私有地には勝手に入らず、入る場合には地主さんの許可を取るようにしましょう。採集していい場所かどうか確認するようにしてください。

野外公園で実践!

実際に竜洋昆虫自然観察公園の野外公園でビーティングをやってみました。先程紹介した簡易的なビーティングセットで実践していきます!

まずは狙いをつけたポイントに受け皿をセットします。低い所を狙う場合には置いてセッティングできますが、高い所を狙う場合には受け皿を手に持って叩いてみましょう。

しげみの下に受け皿を用意

受け皿をセッティングしたら木の枝や葉を叩いていきます。軽く叩くだけでも虫は落ちてきます。強く叩きすぎると植物にダメージを与えてしまいますので注意しましょう。

叩いて落とす

受け皿の上を狙って叩き棒で叩いていきます。

虫が落ちてきた!

虫が落ちてきました!クモの仲間が3匹と小さなハエの仲間が数匹、カスミカメムシの仲間も採れています。

落ちてきた虫に矢印が指さっています。

肉眼では虫が確認できていない状況でしたが、数回叩いただけでも採集することができました!

この一か所だけでもある程度虫が採れましたが、他の場所でも挑戦してみます。

たくさん採れました!
矢印で指すのが大変な程多くの虫たち

コツはいろいろな場所でとにかく叩くことです。何にも見えていないから虫はいないと諦めるのではなく、とりあえずやってみる!そうすると、採れなさそうかなと思った場所からも意外と虫が採れることがありました。同じ植物だけでなく、様々な植物を叩くと良いと思います。

この後も数回ビーティングを行い、たくさんの虫を採集することができたので、その中から3種を紹介したいと思います。

コガネグモの仲間 Argiope sp.

夏には大きく立派な姿と綺麗な円網を見せてくれるクモです。幼体で越冬しているとは驚きでした。冬に姿を見ることはなかったので上手に隠れているのでしょう。新しい発見があると採集がより楽しくなりますね。

ミナミアオカメムシ Nezara viridula

よく見る緑色のカメムシの一種で、作物の害虫として知られています。冬には木に残された枯れ葉にくるまっていたり、木の根元付近の落ち葉の下に隠れていたりします。

ビーティングで採れるのは小さめの虫が多いので、大きめのカメムシが採れると一際存在感があり嬉しくなります。

キイロテントウ Kiiro koebelei

木の葉の上や裏で見つかる黄色いテントウムシです。テントウムシはアブラムシを食べる肉食と思われがちですが、キイロテントウはうどんこ病などの植物の病気の菌を食べる、菌食のテントウムシです。他にも葉を食べる草食など、様々な食性のテントウムシがいます。

目立つ色をしていますが、小さいので見つけるのは少し難しいです。そんな虫でもビーティングをすることで採れることがあります。

ビーティングの魅力

いかがでしたでしょうか?紹介した虫は一部でしたが、他にも多くの虫を採集できました。とにかくたくさん虫が採れるので、やっていて面白いです。大きめの虫も採れますが、普段目につかないような小さな虫もたくさん採ることができるため、新しい出会いがあるかもしれません。自分の眼で見つけられずとも採集できる、誰でも楽しめる採集方法だと思います。

季節によっても採れる虫が変わりますので、冬以外の季節でも多くの虫と出会えるでしょう。いつの季節でも、手軽にできるビーティングにぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。