見出し画像

カニムシを求めて朽ち木の中のいきものさがし

時がたつのは早いもので、もう2月の中旬になりました。もうすぐ春が来て、様々ないきものが動き出し始めるでしょう。そんな春を迎える前ですが、私はとあるいきものを見つけようと夢中になっています。そのいきものとは、カニムシです。

カニムシの仲間

カニムシは土の中や落ち葉の下、樹皮の裏などに潜む肉食の土壌生物です。カニのようにハサミを持っているのでカニムシという名前が付いたと言われています。サイズは1~8mm程度と小さく、クモガタ綱に分類されるクモやサソリに近い仲間です。

今回はカニムシを探す話と、カニムシを探す途中で見つかったいきものを書いていきます。


なぜカニムシを探すのか?


昆虫館では定期的にアンケートを実施していて、「開催してほしい企画展はありますか?」という項目があります。その回答に「カニムシ展」と書かれていました!カニムシは可愛らしくもあり格好良くもある、魅力的な見た目をしています。そのおかげか、カニムシファンが一定数いることは確かです。

「カニムシ展」の開催を検討するために、まずは生態を知る必要があります。しかし、私はカニムシを飼育したことはおろか見つけたことすらありませんでした。土の中や落ち葉の下、樹皮の裏などに潜むため、探そうとしないとなかなか見つからないのです。ただし、生息環境さえあれば身近な場所にも生息しているとのこと。身近にいるのに見つけられていなかったことが、とても悔しく思いました。ハサミを持ち勇ましく格好良いカニムシを、絶対に見つけてやるぞと決意しました。

カニムシの仲間

まずは、情報収集です。身近な場所にもいるというカニムシを、昆虫館の野外公園で見たことがあるかどうかスタッフに聞いてみました。その結果、こんちゅうクンとゴキブリストしずまは、見たことがあるとのこと。どうやら当園のイベントで開催していた「クワガタムシ幼虫をさがそう」で朽ち木を割った際に見たことがあるようです。野外公園で採集できるのであれば、それに越したことはありません。野外公園でカニムシ探しスタートです。

朽ち木の中のいきもの達

カニムシは冬でも採集できるいきものです。ということで時期は問題ありません。スタッフが以前に見つけたことがある朽ち木を割って探してみました。

カニムシを探した環境

朽ち木割り採集は、いつもであればクワガタムシの幼虫などの多少なりとも大きめの昆虫を探しますが、今回探すカニムシはかなり小さい。カニムシが好む環境、好む朽ち木もよく分からないまま、見落とさないように目を凝らして探します。
ですが、カニムシはなかなか見つかりません。カニムシ以外の様々ないきものが出てきたため紹介していきます。

コシビロダンゴムシの仲間

当園では朽ち木の中から良く見つかります。多湿で自然度の高い場所を好むようです。個体差はありますが、体色が薄いオレンジ色をしていて美しいダンゴムシです。

オカダンゴムシ

 身近で一番よく見るダンゴムシです。実はヨーロッパ原産で元々は日本に生息していませんでした。コシビロダンゴムシの仲間よりも乾燥に強いため、様々な環境で観察できます。身近な場所の落ち葉や石をどかしてみると、見つかることがあります。

ミミズの仲間

ミミズは土の中にいるイメージが強いですが、朽ち木の中で越冬していました。寒さには強くないようで、動きはとても鈍かったです。

コクワガタの幼虫

立派なコクワガタの幼虫が出てきました。見つかるとテンションが上がります。以前の記事で書いたように、寒い冬には朽ち木の中で幼虫がすくすくと育っています。

写真を見ると幼虫の前後に食べ跡があるのが分かるかと思います。朽ち木の中の幼虫を探すときは、この食べ跡を見つけるのがコツの一つです。

カニの仲間

当園にはカニも多く生息していて、主に見られるカニは、クロベンケイガニ、ベンケイガニ、アカテガニ、モクズガニの4種です。暖かい時期になると園内のビオトープにたくさんのカニを見ることが出来ます。冬場にはパタリと姿が見えなくなるのですが、朽ち木の中や石の下などに隠れて寒い冬を乗り越えています。

朽ち木の中を探すと冬でも様々ないきものと出会うことが出来るので、夢中になってしまいます。冬のいきもの探しとして、とても面白い採集方法ですが、いきものの住処を壊してしまうことにもなります。朽ち木を探すときは、ルールを守って割りすぎないようにしましょう。今回は当園の敷地内にて採集を行いましたが、必ずその土地の所有者に許可を取ってから行うようにしてください。

カニムシ見つからず・・・

今回の記事で採集した報告をしたかったのですが、「カニ」は見つけることが出来ても「カニムシ」を見つけることは出来ませんでした。朽ち木以外にも土の中なども探してみましたが見つかっておらず、カニムシ探しは難航しています。以前に昆虫館で発見例もあるため生息している可能性は高いです。身近に生息し魅力あふれるカニムシを昆虫館で見つけられるように諦めずに探していきたいと思います。

参考文献
 尾野展嗣, 2009. 日本産クモ類. 東海大学出版会, 15-16.