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よく見るカメムシ7選

すっかり冷え込んできましたね。
 
さて、
カメムシは好きですか?
 
今回はそのへんでよく見る、そして、よく聞かれる
身近なカメムシ7種をざっくりと紹介します。
 
今の時期(秋〜冬)、冬越しのために家に入ってきたり、洗濯物にまぎれこんできたりとカメムシとの出会いが増える季節だからです。
 
あなたが、あの日あの時あの場所でめぐり逢ったカメムシが
「あの時のあの子、この子だったのか!」ってなって
見知らぬ二人(一人と一匹)のままの存在から
軽く挨拶はするぐらいの顔見知り的な存在に
ステップアップしてくれましたらうれしいです。
 
紹介するカメムシのラインナップは筆者(こんちゅうクン)の勝手なさじ加減。
気になるものからぜひチェックしてみてください!


①誰もが思い浮かべる緑カメムシ

カメムシと言えば緑。
緑色のカメムシは何種もいますが、当園でもっともよく見る緑色のカメムシといえばこちら。
 
ミナミアオカメムシです。

うつくしい“アオ”!

インゲン、ダイズ、ナス、トウモロコシ、キュウリなど、いろんな作物に被害をもたらす大害虫。
イネからも汁を吸って、米の色を悪くしてしまう「斑点米」を生み出す斑点米カメムシとしても有名です。
 
1960年代の分布北限は和歌山県でしたが、近年分布を北上中。
2006年にはここ静岡県磐田市でも発見され、当園でも思いっきり観察できます。
 
アオクサカメムシというめっちゃそっくりな別種がいますが、当園では見たことがありません。
(見分けポイントはいろいろありますが、触角の先がミナミアオは茶色・アオクサは黒が見やすい)
 
ミナミアオカメムシについてあまり聞かれることはないですが、幼虫はややハデなので時々問い合わせがあります。

ミナミアオカメムシのややハデな幼虫

畑の近くでは見つけられる可能性大なのでぜひ注目してみてください。
背中に白い帯が入っているのもよく見かけます。

白い帯入りミナミアオカメムシ

いろんなパターンの色もありますし、
越冬する時には茶色くなって“アオ”じゃなくなる子もいますのでご注意を。

②今年、関西で大発生

2023年、関西方面で大発生。ニュースでも大変話題になりましたね。
もうみなさん覚えたでしょうか。
 
ツヤアオカメムシです。

ツヤのあるツヤアオカメムシ

ミナミアオカメムシに似た緑色をしていますが、名前の通り体にツヤがあります。
 
大発生の被害を受けた方には申し訳ありませんが、
正直に申し上げますと、大量のカメムシが群がる現場を見てみたくってですね…
磐田市内の夜の外灯を探しに行ったりしてみました。
ニュースほどの大発生は磐田では見られませんでしたが、コンビニの店員さんに聞いたら
「今年は例年より多い」とのこと。
確かに多かった気もしてきました。

磐田市内のコンビニで採集したツヤアオカメムシたち

クサギカメムシ、チャバネアオカメムシと並ぶ果樹の害虫カメムシとして有名で、主な発生場所はスギ・ヒノキの人工林。
そこから季節ごとにいろんな果実や木の実を移動しながら吸汁してます。
飼育にはラッカセイが最適です。

③アリのように育ち、ハチのように舞う

まずはこちらをご覧ください。

さて、なんでしょう?

正解は、ホソヘリカメムシの幼虫でした。
幼虫がアリそっくり!
よく見ると、カメムシの特徴である針みたいな口が見えます。
 
そして成虫がこちら。

ホソヘリカメムシの成虫

ダイズなどの害虫として有名で、色も緑ではなくダイズらしい(?)茶色です。
ゴツゴツとした体型でカメムシっぽくなく、
飛び方もカメムシというよりかはハチのようにスムーズにブイーンっと飛び回ります。
 
一文字違いの「ホソハリカメムシ」というカメムシもいるので間違えないようにご注意ください。

④カメムシらしくない細身ボディ

こちらも当園では常連のカメムシ。
クモヘリカメムシです。

クモヘリカメムシ

 当園では、イネ科植物の穂の部分に群がって停まっている姿をよく見かけます。
もちろん水稲にもつき、斑点米の原因にもなっています。
 
いちばんの特徴はやはりその細身ボディ。
「これはなんですか?」と聞かれて答えると、
「カメムシなんですか!」と驚かれることも多いです。
 
不安な方はぜひ素手で捕まえてみてください。
カメムシらしいにおいを体験できるはずです。

⑤ちいかわ“くさ”カメムシ

なんか小さくてかわいい姿

大きさ約5mm。ほんと小さくてかわいらしい。
もう、省略して「ちいかわ」って呼ぶことにしましょうか。
 
ちいかわはダンゴムシやヒメマルゴキブリのように、愛され丸っこい虫として人気急上昇間違いなし…
なんて少し夢見た時期もありましたが、どうやら難しいようです。
 
だって、
 
カメムシってバレてるから!
つかむと臭いから!!
 
名前をマルカメムシといいます。
 
クズなどのマメ科植物につき、つかんでにおいを出せば、ちゃんと臭いです。
他のカメムシより特段臭いというわけではないと思うのですが、見た目が小さくて丸っこいのにつかむとちゃんと臭いので、他のやや大きめのカメムシよりもなんだか余計に臭く感じてしまうような気がしています。
ギャップ萎えってやつですね。見た目で損してるタイプです。
 
場所にもよりますが、秋に洗濯物についてくることが多いのもこのマルカメムシ。
取り込むときにぜひこの「ちいかわカメムシ」ならぬ
「ちいかわ“くさ”カメムシ」がいないかごチェックください。

⑥近年、目撃例と存在感がマシマシ中

最近問い合わせが増えてきたカメムシがこちら。

幼虫(左)と成虫(右)

 キマダラカメムシです。
終齢幼虫の奇抜なデザインも目立ちますが、なんといってもこのカメムシはでかい!
 
そして、サクラやナンキンハゼなどの街路樹にもつくので、
人の生活空間に近い環境でも見つかります。
 
先日、友人の小学校の先生から
「教室に出現して大騒ぎになったのだけど、これはなんという虫?」
とLINEで送られてきたのも、このキマダラカメムシでした。
 
キマダラカメムシは1770年代に長崎で採集され、1783年に記載。
その後1934年に再発見されてからはいろんな場所で見つかるようになり、分布を北上。
現在は石川県や群馬県でも発見されていて、もちろん静岡県にも定着済み。
 
個人的な話ですが、
2019年に大阪で多くのキマダラカメムシを見て興奮した記憶があるので、
その時点ではまだ静岡で今ほど多くはいなかったのだと思われます。

⑦魅惑の青リンゴ臭を放つ新参虫

最後に紹介するのは、またもや最近発見例が増えている北米原産の外来カメムシ。
マツヘリカメムシです。

当園・野外公園で見つかったマツヘリカメムシ

マツ科が寄主植物として知られており、
越冬するときに樹皮の下だけでなく建物の中に入ってきます。
僕がこれまで見たのは、いずれも建物の壁や地面。
時期はやはり秋〜冬にかけて、今の時期です。
 
日本での初記録は2008年、東京にて。
これまでに本州だけでなく、九州、そして沖縄にまで急速に分布を拡大しているようです。
静岡県でも少なくとも2017年には記録があり、ここ数年で見られる機会も増えてきています。
 
ここまで説明すると、恐ろしい侵略生物のイメージになっているかもしれませんが
まさかの特徴として、においがフルーティーです。
青りんご、または梅っぽい香りがします。
もし見かけたら、試してみる価値ありです。

おわりに 〜反省とカメムシの魅力〜

最初は3種ぐらい紹介して終わろうと思ってたのに、気がつけば5種。
さらに追加して結果的に7種も紹介してしまいました。
 
いつも他のスタッフ(かつや君)から文字数が多いと言われているのに、また長くなってしまっています。
ごめんなさい。
 
っていうかこういう無駄なことばっか書いてるから、文字数が無駄に多くなるんですよね。
わかっているのにやめられないですよね。堪忍堪忍。
 
では最後に、僕が勝手に思うカメムシの魅力を2つ。
(ほんとはもっといっぱいあるけど、あえて2つに絞っています。もうこれ以上は怒られそうだから。)
 
カメムシの魅力①
【いつも臭いわけじゃない】

 
カメムシを見せると速攻で「臭い!」って言われることがありますが、
そんなわけありません。
さわったり刺激をしたりして、カメムシが臭い物質を放出して、ようやく臭さを感じられます。
 
カメムシは、いつも臭いわけじゃない。
そう思うと、カメムシの姿や生き方に注目できたりしないでしょうか?
 
もし可能でしたら、今度カメムシに
「おいで、さあ。ほら、臭くない。臭くない。おびえていただけなんだよね」
と、やさしく手を差し伸べてみてはいかがでしょうか。
(もし臭くなっても責任は負いかねます。)

チャバネアオカメムシを手に乗せた。ほら、臭くない。

カメムシの魅力②
冬でも会える】
 
たとえばカブトムシは幼虫の姿で、バッタやカマキリは卵で冬を越します。
どんな姿で冬を越すのかは昆虫の種によってさまざまですが、
カメムシって、成虫で冬を越す種が多いと思います。
 
もうすぐ外は白い冬。
虫たちの姿は見えにくい季節になりますが、どこかにカメムシは隠れています。
落ち葉の下、樹皮や建物の隙間などの見つかりにくい場所にいることがほとんどですが、
決して会えないわけではないのです。

落ち葉の下で見つかったツヤアオカメムシ

冬になると虫が少ないこともあり、
じーっと隠れているカメムシに出会えるととてもうれしくなります。
ぜひあなたもこれからの季節、カメムシを探してみてください。
 
あなたに会えて ほんとうによかった。
 
そう思えるカメムシとの出会いがあなたに訪れ、
キラキラとした思い出がこの冬に1つでも増えることをお祈りしつつ、
筆を(ようやく)置かせていただきます。


参考文献
 岸本年郎・島田 孝, 2021. 静岡市における外来種マツヘリカメムシの記録. 東海自然誌, 14: 71–73
 野間健吾・西村知良, 2023. 神奈川県藤沢市のサクラ類とカツラにおけるキマダラカメムシの季節消長. 昆蟲(ニューシリーズ), 26(2): 58–65
 湯川淳一・桐谷圭治, 2008. 地球温暖化の影響によると推察されるミナミアオカメムシとアオクサカメムシの我が国における分布域変化. 植物防疫, 62: 14-17


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