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『ゴキブリ展8』の見どころと注目ゴキブリ3選

今年もこの季節がやってきた

2月。まだまだ寒い日が続き、虫のシーズンももう少し先ですが、この時期の昆虫公園は大忙し。展示水槽の作成にパネルの情報チェック、そしてグッズ作成と、様々な業務が入り乱れます。そう、“あの”『ゴキブリ展』が始まるのです。


ゴキブリ展とは

皆さんご存知! みたいなテンションで始めてしまいましたが、そもそも『ゴキブリ展』とはなんなのか。簡単にご紹介したいと思います。

「ゴキブリ展8」ポスター。2025年2月1日(土)より開催!

『ゴキブリ展』は磐田市竜洋昆虫自然観察公園で開催される企画展です。2018年から毎年2月に開催しており、今回(2025年)で8回目の開催となります。50種以上の生きたゴキブリの展示、関連生物や当園での研究など、ゴキブリに関する様々な展示を行っています。展示されている48種のゴキブリの中から「推しゴキブリ」を選んで投票する「GKB48総選挙」も開催しており、毎年熱い戦いが繰り広げられます。私の調べた限りではゴキブリ単体での展示としては世界最大規模のようです。

過去のゴキブリ展の様子
『ゴキブリ展8』のGKB48総選挙メンバー

嬉しいことに、「竜洋昆虫自然観察公園と言ったらゴキブリ展!」と言ってもらえるようにもなり、この時期は日本全国から多くのお客さんが来てくれます。昨年は台湾からわざわざ来てくれた方もいて驚きました。『ゴキブリ展』は「当園名物の企画展」なのです。
 
今回は『ゴキブリ展8』開催直前ということで、主担当である私が選ぶ「注目の展示3つ」「地味だけど注目してほしい生体3種」をご紹介したいと思います。最後には販売予定のグッズ情報も掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

まずは「注目の展示3つ」です。

注目展示①世界のごきぶりホイホイ大集合

アース製薬株式会社の「ごきぶりホイホイ」は日本だけでなく、世界中で販売されています。国と地域によってデザインを変えており、ゴキブリだけでなくヤモリ やサソリが印刷されているデザインもあります。昨年に引き続き、なかなかみることのできない世界のごきぶりホイホイを展示します。ゴキブリ対策グッズはゴキブリと人とのつながりそのもの。見比べて楽しんでいただけたらと思います。

世界のごきぶりホイホイ(写真は昨年の展示)

注目展示②BRUTUS珍奇昆虫2の標本展示

2024年8月に発売された『BRUTUS 珍奇昆虫2』は昆虫好きだけでなく多くの方が手に取り話題となりました。

BRUTUS珍奇昆虫2

私もゴキブリの袋とじを担当させていただいたのですが、そこに掲載した標本を展示いたします。美しいルリゴキブリの仲間やゴキブリには見えないようなテントウゴキブリの仲間、小さい子に大人気のオサルサンゴキブリなど、多様性に溢れたゴキブリの魅力をご覧いただければと思います。

注目展示③ゴキブリに関する貴重文献の展示

江戸時代に発行された百科事典『和漢三才図会』明治に発行された日本初の生物学用語集『生物學語彙』の実物展示です。『和漢三才図会』の「蜚蠊(フイレン)」の項目にはゴキブリの絵が掲載されており、見た目はチャバネゴキブリのように見えます。また、目次には「蜚蠊(フイレン)」の他に「御器噛」とも示されており、「ゴキカブリ」というルビが振られています。現代のゴキブリ呼称の原型が見てとれます。
 
『生物學語彙』は「ゴキカブリ」から「ゴキブリ」に変じた転換点と考えられている書籍です。本書ではゴキブリが2 回掲載されているのですが、1 回目はゴキカブリと印字されているのに対し、2 回目になぜか「ゴキブリ」とされています。この本は活版印刷という方法で印刷されています。ハンコのようなものを一字一字組んで、印刷します。どうやらこのときに、「カ」を入れ忘れてしまい、「ゴキブリ」と印刷されることになり、その後、他の本でも「ゴキブリ」が使われ定着したとされています。初版しか発行されなかったようで、現存するのはわずかと考えられます。どちらも貴重な文献です。

これが本物の『生物学語彙』!

続いて、「地味だけど注目してほしい生体3種」をご紹介します。

注目ゴキ①ヒメチャバネゴキブリBlattela lituricollis

日本では主に九州以南に生息する体長9~11 mmほどのゴキブリです。高知県でも記録があり、近年では大阪に移入個体群と考えられる記録もあります。飲食店などでよく目にするチャバネゴキブリBlattela germanicaに比べて小さく、気持ち淡い色をしています。慣れないとチャバネゴキブリと見分けがつかないほど似ていますが、何度も見比べているとわずかな差に気が付くかもしれません。GKB48総選挙には今年初参戦。チャバネゴキブリと票割れが起きそうですが、どうなるか注目です。

ヒメチャバネゴキブリ

注目ゴキ②ホタルゴキブリSchultesia lampyridiformis

中央アメリカや南アメリカに生息する13~20 mmほどのゴキブリです。日本でホタルというとゲンジボタルやヘイケボタルを想像するかと思います。そのため、ホタルゴキブリと言われても「どこがホタルなのか」と思う方が多いでしょう。中央アメリカや南アメリカにはこんな感じの薄橙色のホタルがおり、本種はそれらのホタルに擬態していると考えられています。そのためホタルゴキブリと呼ばれているのです。これまで何度もGKB48総選挙に参戦していますが、なかなか票が伸びていません。確かに地味ではありますが、前胸背板と翅にある橙色の濃淡で表現された模様はいくら眺めても飽きが来ません。

ホタルゴキブリ

注目ゴキ③マルバネゴキブリHebardina yayeyamana

宮古列島、八重山列島に生息する10~17 mmのゴキブリで、全体的に真っ黒で目立った模様はありません。メスに比べてオスのほうが小さく、あまりの差にオスを見た時に幼虫かどうか一瞬迷うほどです(成虫は翅があるのですが、黒いので見えづらいのです)。和名の通り、丸っこい翅を持っています。この翅は短くて飛ぶことはできません。日本産ゴキブリの中でもあまり目立った存在ではないのですが、濃い赤色をした肢やスタイのような可愛らしい翅は一見の価値ありです。

マルバネゴキブリ

さぁゴキブリ展へ!

以上、「注目の展示3つ」と「地味だけど注目してほしい生体3種」でした。2025年2月1日(土)から開催の『ゴキブリ展8』ではこの他にも紹介しきれないほどのゴキブリに関する展示がありますので、ご興味のある方はぜひお越しください。

余談でグッズのはなし

今回のゴキブリ展では、これまで作成してきたグッズに加えて、サコッシュやハンカチなどの新作グッズも販売予定です。家でもゴキブリとの生活をお楽しみください!

ゴキブリアクリルスタンド
新作のサコッシュ。ドミノとハテナがかわいくておすすめです