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昆虫館で働く“カエル”スタッフの紹介

「いいか国とは“人”なのだ‼︎」
 
大人気コミック『ワンピース』に登場するアラバスタ王国の王、ネフェルタリ・コブラの名言。
組織よりもそれを構成する人そのものこそが大事であり、本質であると。
しびれます。

この名言いつだったっけとワンピース全巻揃ってる実家に行って確認してきました。
19巻でした。アラバスタ編、懐かしい。
 
僕は常々、昆虫館も同じだと思っております。
なのでもし、スタッフたちの反乱にあったらこう叫びたい!
 
「いいか昆虫館とは“人”なのだ‼︎」
 
そう言って武器を捨て、反乱にも抵抗せず、
政権交代ならぬ、館長交代も甘んじて受け入れようじゃないか!
私がいなくなってもそこにスタッフが、昆虫と昆虫館を愛する人がいる限り、
昆虫館は存続し続けるのだから!!!
(でも、できたら反乱する前に不満とかあったんなら教えてほしかったなぁ…)
 
すみません。取り乱しました。
 
妄想はさておき。
 
昆虫館といえば、もちろんそこで展示されている昆虫たちが主役なのですが、
そこにいる“人”も大切な存在。
うちには個性的なスタッフもいるし、
虫との出会いはもちろん、人との出会いも大切にしてほしい。
 
そんな願いを込めて、うちのHPにはスタッフ紹介のページを設けております。

HPのスタッフ紹介

ゴキブリ研究者としてだけでなく、GKB48のプロデューサーとも名高い“ゴキブリスト”しずま
 
近年メキメキと頭角も胸角も現してきた“カブクワの伝道師”かつや
 
祝いの場面には欠かせない“割れないくす玉職人”ほりうち
 
全員は紹介しきれませんが、このようなやや個性豊かめなスタッフ一同が
皆さまのご来園を心よりお待ち申し上げます。
 
ところで、このHPのスタッフ紹介、
いちばん端っこ(右下)で一際異彩を放つスタッフに気づいたでしょうか。

HPのスタッフ紹介(右下らへん再掲)

そう、彼こそがうちで長年働き、すっかりベテランの域に達した古参スタッフ、
“アズマどん”なのだ!!


アズマどんとは


アズマどんのアー写

急に「“アズマどん”なのだ!!」とか言い出してすみません。
久々にワンピースを読み返して(しかもアラバスタ編が最高すぎて)、つい力が入ってしまいました。
 
今回は、
なぜうちのスタッフにカエルがいるのか、
アズマどん」って一体全体何なのか、
そもそも「アズマどん」とはどのように出会ったのか 等について、
私こんちゅうクンが解説させていただきます。
 
まず、何においても真っ先にお伝えしておかなければならない最大のポイントが
 
アズマどんは「カエルである」ということ。
ヒトじゃありません。
 
「昆虫館とは“人”なのだ‼︎」
とか叫んでおきながら人じゃなかった。カエルでした。
アズマヒキガエルというヒキガエルのなかまです。
 
日本に生息するヒキガエルは、
ニホンヒキガエル、アズマヒキガエル、ナガレヒキガエル、ミヤコヒキガエル、オオヒキガエルの4種1亜種。

ミヤコヒキガエル。宮古島にて。宮古島では条例により捕獲等が禁止されています。当園で飼育・展示している個体は南大東島に移入したものになります。
オオヒキガエル。石垣島にて。特定外来生物につき飼育や生きたままの移動等が法律により禁止されています。

本州にはニホンヒキガエルとアズマヒキガエル、ナガレヒキガエルが生息。
ニホンヒキガエルとアズマヒキガエルは亜種の関係にあり、
西日本(近畿以西)はニホンヒキガエルが、東日本(近畿以東)にはアズマヒキガエルが分布。
ナガレヒキガエルは北陸から紀伊半島の渓流に生息…
 
はっ、、なんということだ!!
 
これを書いている今、急に思い出したのですが、
昔、奈良県の山奥で川遊びしてた時にでかいヒキガエルに遭遇しまして、
あれ、今思えばナガレヒキガエルだったかも!奈良だし、渓流だったし。
当時ただの「ヒキガエルかぁ」ぐらいにしか思ってなかった。
ちゃんと見ておけばよかった!カエルと一緒に泳いでる場合じゃなかった!!

岐阜県のアクア・トトぎふで見たナガレヒキガエル。うちでは展示していません。いつか野外で見てみたいと思っていたのに、実は見たことあったのかも。

 すみません。取り乱しました。
 
静岡県にはアズマヒキガエルが生息しているわけですが、
ニホンヒキガエルとは鼓膜(目の後ろの◯部分)の大きさと目との距離が見分けるポイントの一つになるので
図鑑などでぜひご確認ください。

こちらは兵庫県出身のニホンヒキガエル

 また、ヒキガエルといえば「ガマ合戦」
春になると池や水たまりに多くのヒキガエルが集まり、オスたちがメスの奪い合いをします。

アズマヒキガエルのガマ合戦。おびただしい数のヒキガエルがメスの奪い合いでひっちゃかめっちゃかする。

こうして卵が残され、オタマジャクシが生まれ、育っていきます。
ヒキガエルのオタマジャクシ期間は約1ヶ月と短く、最初の成体は約2cmととても小さなヒキガエルとして陸上生活をスタートします。

アズマヒキガエルの卵

“アズマどん”という名前の名付け親はゴキブリストしずま。
名付けた本人に当時のことを振り返ってもらいました。

「向こうからそう語りかけてきましたね。」(しずま談)

だそうです。
 
「アズマ」はアズマヒキガエルだからだと思っていたのですが、
名付け親はそんなこと一切言っていませんでした。
 
年齢は不明。
出会った頃にはもう立派な成体でしたので、おそらくすでに10年以上生きていると予想しています。
うちに遊びに来てくれる幼児や多くの小学生より、たぶんだいぶ歳上です。
そんなことを微塵も感じさせないチャーミングなところも、アズマどんの魅力なのです。
 
性別も不明。
ヒキガエルのオスは後ろからつかまれると
「クックックッ」と鳴くそうです。

後ろからつかまれたアズマどん

※ヒキガエルは体内に毒があります。なるべく素手で触らない方がよいです。
※他の雌雄を見分けるポイントもありますが今回は割愛。
 
アズマどんをつかんでみたところ一切鳴きません。
なんだかメスっぽい。
よく見たらなんか肝っ玉母ちゃんみたいな顔つきに見えてきた。
でも名前“アズマどん”って言っちゃってるしなぁ…
 
ということで、
性別については断定できないので「不明」ということになっております。
ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 
出身は静岡県菊川市。
後で詳しく紹介しますが、竹やぶで出会いました。

アズマどんの仕事


アズマどんは「スタッフ」ですので、さまざまな仕事を日々こなしてくれています。
ここでは代表的なアズマどんの仕事をご紹介。
昆虫館でいつか働きたいと思っている方、ぜひ参考にしてみてください。
 
【展示】
ただそこにいてくれるだけでいい。
存在すること。それ自体が仕事の大半です。
いてくれるだけで、みんな大喜びなのです。
(ただし、この業務はアズマどんだから為せる技です。他のスタッフがやると怒られます。)

常設展示としてどんっと佇むアズマどん

【イベント対応】
雨の日に行われるイベント「ヒキガエルのごはんタイム」では、
与えられたコオロギ(時々ゴキブリ)をペロンペロンッと食べまくり、来園者を驚かせます。

コオロギを食べるアズマどん

 【Youtube出演】
当園公式YouTubeチャンネル「竜昆ちゃんねる」に出演。
コロナ禍でイベントができない中、何度でも上記の「ごはんタイム」イベントを見てもらおうと動画を撮影。
カメラを向けても一切緊張することなく、いつも通りの食いっぷりを披露してくれました。
 
竜昆ちゃんねる「【爆食】ヒキガエルにエサをあげたら・・・」

 【モデル】
当園オリジナルグッズの缶バッジやポストカードの写真モデルとしても活躍しています。
現在、缶バッジは品切れ中ですが、ポストカードは在庫ありですので
お土産に、年賀状に、懐かしの友への一報に、ぜひご活用ください。

アズマどんのポストカード 1枚100円

また、こんちゅうクンの著作には今のところもれなく登場。
本を持ってる人はアズマどんの姿を探してみてね。

『みんなの昆虫学校』(くまふメディア制作事務所)
『こんちゅうクンのいちばん虫ずかん』(アストラハウス)

 【年パスの利用促進キャンペーン隊長】
アズマどんの展示ケースには常に“本人の”年パスが掲示されています。
スタッフで唯一の年パス持ち!
大人1320円、小中学生500円という年パスの脅威のお得さを、自ら購入することでPRするというスタッフの鑑なのです!!
(年パスをお申し込みの際は、顔写真をお持ちいただく必要がございます)

アズマどんの年パス。 あ、期限…

 【後輩の育成】
アズマどん入社当時、当園に在籍するヒキガエルはアズマどんのみでした。
それが今や何匹かの後輩をもつ頼れる先輩に!
特に何か教えたり、帰りに飲みに連れて行ったりするわけではないのですが、
きっとケース越しに背中で語って後輩を育成してくれています。

ミヤコヒキガエルたち
アズマヒキガエルの“だんじろう”。ららぽーと磐田の磐田市情報館に出張中で、すっかり戻って来なくなっちゃった。

このようにアズマどんの仕事は多岐に渡り、もうアズマどんなしには当園の運営は成り立たないのです!
会社に頼んで昇給してもらいたいぐらいの活躍ぶりなのです!!

アズマどんとの出会い


ここまでアズマどんの基本プロフィールから働きぶりまでをご紹介してきましたが、
最後に**アズマどんの入社経緯、どのように出会い、**そして、どうしてここへ来たのかについてもお伝えしなければなりますまい。
 
2017年7月4日。
 
静岡県菊川市で虫とりをしていたスタッフ北野が竹藪で変わったカエルの置き物を発見。
よく見たら、生きてました。ホンモノのカエルでした。
だって全然動かないんだもの。

出会った時のアズマどん

頭に葉っぱを乗せていたので、タヌキが化けたやつかもと思ったし、
竹藪で時期も時期だったので、かぐや姫的なあれかとも疑ってみたのですが、
捕まえてみたら、ちゃんと生きたヒキガエルでした。
 
そして、すぐさま職場に電話。
ゴキブリストとの相談の結果、採用が決定。
その場でスカウト(確保)することにしたというわけです。

アズマどんを片手に職場に電話する北野

※くり返しになりますが、ヒキガエルは毒を持っています。なるべく素手で触らない方がよいです。そしてもし触った場合はすぐに手を洗いましょう。
※また、ヒキガエルに限らず、生き物を飼う時にはきちんと準備をしてから飼い、一度飼育したら最後まで飼いましょう。
 
この日からアズマどんのりゅうこん生活がスタートし、現在まで至ります。

アズマどんの今


2023年7月5日。
 
月1回行われるスタッフ会議の最後、突然アズマどんケースの前に集められたスタッフたち。
そこへ不自然な動きでみんなの前に歩み出たスタッフが1名。

何かを手にして前に出るスタッフ

ほりうちだ。
 
記念日やお祝い事があると、どこからともなく現れる“割れないくす玉職人”ほりうち
いつもなぜか一発で割れず、手動でめっちゃ振動させるという斬新な方法で割られる手作りのくす玉。
この日はアズマどんに向けて、きれいなくす玉が披露されました。

くす玉で勤続6年をお祝いされるアズマどん。一発で割れたかどうかは、うちの7/5のインスタをチェックしてみてください。動画で上がってます。

この日の前日、7月4日がアズマどんの入社記念日でした。
6年もの長きにわたり、当園の守り神的存在として居座ってくれている古参スタッフへ、同僚たちから惜しみない感謝の拍手が送られました。
 
昆虫という短命な生き物を扱う昆虫館の展示の中で、数年に渡り同じ個体が展示されることはかなり稀。
スタッフだけでなく、来園される皆さまからもアズマどんに優しいお声掛けをいただき、いつもとても嬉しいです。
 
皆さま、
いつもアズマどんを愛してくださってありがとうございます。
まだ会ったことがない方は、ご来園の際にぜひ会ってやってくださいませ。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
 
アズマどん、
これからも一緒にがんばりましょう。
そして、どうか長生きしておくれ。