青いダンゴムシの採集と飼育
2019年12月。「ダンゴムシ展」の開催を控えていた私は、かねてから耳にしていた「青いダンゴムシ」を探す旅に出ました。今回はそのお話を書いていきたいと思います。
青いダンゴムシ
子どもたちに大人気のダンゴムシ。庭や道端など、身近な場所に生息していることもあり、捕まえたり飼ったりしたことがある方も多いのではないでしょうか。
昆虫館にいると、「ダンゴムシの飼い方を教えてください」や、「ダンゴムシの食べ物は何ですか」など、ダンゴムシに関する質問も多く受けます。なかには親御さんから「子どものポケットからたくさんダンゴムシが出てきました」なんてお話を聞くことも。虫が苦手でもダンゴムシなら触れるという子も多くいます。身近な上に丸くなるというキャッチ―な特徴を持ち、噛んだり刺したりしないので、生き物に親しむ入り口としてとても適した生き物です。
ダンゴムシは昆虫ではなく甲殻類で、昆虫とは体の構造など違いがありますが、私も例にもれず子どものころからダンゴムシが大好きだったので質問にわかる範囲でお答えしたり、虫探しに行ってはご当地ダンゴムシを集めたりしていました。
好きな子も多く、質問を受ける回数も多いため「いっそのこと展示にしようかな?」ということで、2020年1月から『ぷち特別企画 だんごむし展』を行うことにしました。できるだけ様々なダンゴムシの展示を行おうと、企画が決まった日からこれまで以上にダンゴムシを探して回る日々が始まりました。
青いダンゴムシの採集
あちこちにダンゴムシ探しに行く中で、かねてから気になっていた「青いダンゴムシ」を採集できないかと考えました。
青いダンゴムシと言っても、そのような特徴を持つ種を指しているわけではありません。ダンゴムシがイリドウイルスというウイルスに感染し、ウイルスが体内で増殖するとどんどんと青くなっていきます。つまり青いダンゴムシとは病気になったダンゴムシのこと。感染した個体はいずれ死亡してしまいます。
この青いダンゴムシは庭でも道端でも見つかる可能性はあるのですが、数は少ないです。見つけるのは生息地や食べ物が限られているような虫とはまた違う難しさがあります。
ダンゴムシ採集中に青いダンゴムシが混じっていないかよく見ていましたが、それらしき個体は0匹。まさに雲をつかむような話で、どうしたら見つけられるのだろうと悩んでいました。
そんなある日、友人に青いダンゴムシが多く生息しているという場所を案内してもらえることになりました。青いダンゴムシはどこでも見つかる可能性があるものの、多い場所というのも存在しているようです。早速日程を合わせ、その場所に向かうことにしました。
ポイントに到着して、さぁ探すぞと意気込むものの、ダンゴムシはどこにでもいるのでどこを探せば青いダンゴムシが見つかりやすいのかよくわかりません。とりあえず、ダンゴムシが多くいそうな場所で探索を開始しました。
するとなんと、探索開始からすぐに青いダンゴムシを発見しました!
さらに、オカダンゴムシだけでなくコシビロダンゴムシの一種の感染個体も見つかりました。
探してみると、次々と青いダンゴムシが見つかります。そもそもダンゴムシの密度が高く、落ち葉をかき分けるとワサワサとダンゴムシが出てきて、その中に青いダンゴムシがぽつぽつと混じっています。
1時間ほど採集すると、30匹ほどの青いダンゴムシを得ることができました。こんなにたくさん見つけられると思ってはいなかったので想像以上の収穫に大喜びで帰りました。
青いダンゴムシの飼育
昆虫館に青いダンゴムシを持ってきて、飼育セットを作ります。改めて写真撮影も行いました。
イリドウイルスがどのような経路でダンゴムシからダンゴムシへ感染するのか調べても分からなかったのですが、感染個体のフンや死骸を食べることによって感染するのではないかという予想と、生息地での高密度の生息をヒントにしてイリドウイルスに感染したダンゴムシと通常のダンゴムシを高密度で飼育したところ、イリドウイルスが他のダンゴムシに感染しました(ダンゴムシには申し訳ないですが……)。
ただ、すべての個体に感染するのではなく、ぽつぽつと感染していく様子です。正確に数えていませんが、100匹に対して2~3匹といった感じでしょうか。常に低密度で感染個体がいるという状態です。このおかげで『だんごむし展』での常時展示も実現できました。
ダンゴムシの他にも、ワラジムシやホソワラジムシにも感染が確認でき、ダンゴムシからワラジムシへの感染もあるようです。彼らはとても近い仲間なので納得ですね。
青いダンゴムシはみなさんの身近でも見つかるかもしれません。また、稀に真っ白なアルビノのダンゴムシも見つかることがあります。ぜひ探してみてください。