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不思議な生物 カギムシ

肢がたくさんあり、ゆったりした動き。粘液を噴射して獲物を捕らえる。このような特徴を聞いたら、皆さんはどんな生き物を想像しますか?

こんにちは、ゴキブリストしずまです。気づけばこのリレーマガジンも3巡目。「ゴキブリストを名乗っているのにゴキブリの記事書かないのか?」という声が聞こえてきそうですが、今回もゴキブリではない生き物のお話をしたいと思います。
今回フォーカスする生き物は、カギムシです。


なかなか見つからないカギムシ


カギムシは有爪動物門というグループの生き物で、節足動物や緩歩動物に近い仲間とされています。中南米、オセアニア、東南アジア、アフリカ南部に生息しています。日本には分布していないので、あまりなじみがない生きものかと思います。ナメクジのような、ムカデのような掴みどころのない姿をしていて、かわいいと感じる方もいれば、ちょっと不気味と感じる方もいるような絶妙な見た目です。

湿った森の落ち葉の下や洞窟内などに生息していますが、見つけるのは難しく、出会うには運と努力が必要です。私はこのカギムシが大好きで、様々な場所で探索してきました。しかし、出会うことができたのはオーストラリアのクイーンズランド州ケアンズの森の中のみで、これも他の生きものを探している最中にたまたま見つけることができたに過ぎません。生息しているとわかっている場所でも、見つけ出すことは至難の業です。

オーストラリア・ケアンズで出会ったカギムシ
腹面が青い種
腹面が薄橙色の種


カギムシの体


カギムシは独特な体の作りをしています。全身は柔軟性があり、小さな突起が並んだきめ細やかな体表面をしています。頭部には触角が1対あり、その根元には1対の単眼を持ちます。口器の左右には粘液を噴射する器官を持っています。

バルバドスカギムシの体表面
バルバドスカギムシの頭

胴部から尾部には多数の付属肢を持ち、その先端には鉤爪を備えます。これが有爪動物やカギムシといった名前の由来となっています。

カギムシの「カギ」

たくさんの付属肢を器用に使ってゆったりと動きます。この独特な見た目と雰囲気から、コアなファンの多い生きものです。

カギムシの狩り


カギムシは小さな生き物を捕獲して食べます。のほほんとした見た目で狩りのための武器なんて持っていなそうに見えるカギムシですが、実はすごい方法で狩りをします。
口の左右にある器官から粘液を獲物に向けて噴射し、動けなくしてしまうのです。
その後、身動きが取れなくなった獲物にゆっくりと近づき、消化液を注入して内部を溶かしてから食べます。粘液の発射スピードはとても速く、目ではとらえきれないほどです。粘液噴射は捕食の時だけでなく、捕食者などに襲われた際にも使用します。

柔らかくてゆったりした動きなので他の生きものにすぐ食べられてしまいそうですが、この粘液噴射を使うことで、捕食者などから逃れているようです。

ピンセットに粘液噴射!

 竜洋昆虫自然観察公園の公式youtubeで粘液噴射の瞬間を撮影しました。こちらもぜひご覧ください。

ミニ展示 カギムシ


 今回ご紹介したカギムシですが、なんと7/8(土)より、当園で特別展示を行っています。

ミニ展示 カギムシ

バルバドス島に生息するバルバドスカギムシEpiperipatus barbadensisが登場しており、粘液を噴射する動画も会場にて放映しています。ずっと開催したいと考えていましたが、カギムシという生き物の認知度が低く、飼育も難しいということでなかなか実行できずにいました。

しかし、展示しなければいつまでも認知度は低いままで、この魅力的な生き物を知ってもらえないままです。ちょうど、少し前から「ミニ展示」をはじめたこともあり、題材としてはちょうどいいと思い開催する運びとなりました。
日本には生息しておらず、生息地でもなかなか出会うことができない不思議な生き物カギムシ。ぜひこの機会に会いに来てください。

※展示終了日は未定です。カギムシの体調によって急遽展示終了となることがあります。展示終了はHPにてお知らせいたしますので、ご来園の前にご確認お願いいたします。