ヘラクレスオオカブト展示の舞台裏
とんでもなく大きい体。緩やかな弧を描きながら力強く伸びる大きなツノ。
黄色く艶めく美しいボディ。みんな大好きヘラクレスリッキーです。
はじめまして。りゅうこんの飼育担当のかつやと申します。
主にカブトムシ・クワガタムシの飼育を担当しています。
大人気のヘラクレスリッキー
カブトムシにも種類がたくさんあります。大きかったり綺麗だったりする種類が子供達には人気です。その中で特に人気なのがヘラクレスオオカブトです。ヘラクレスオオカブトは中南米に生息する世界最大のカブトムシです。今回紹介するヘラクレスリッキーは南米のエクアドル、コロンビアなどに生息するヘラクレスオオカブトの亜種になります。
世界最大級であるヘラクレスリッキーは子供達から大人気の昆虫です。
みんなが注目し、大好きだからこそ、毎年の夏に開催される「世界のカブト・クワガタ展」では展示をしたいと思っています。
「世界のカブト・クワガタ展」終了後も展示を続けるのですが、成虫の寿命は半年~1年程であり、どんなにしっかりと飼育しても1年経たずに亡くなってしまうことがほとんどです。展示から姿を消すとお客様からすぐに「ヘラクレスはいないのですか?」と聞かれます。それほどに大きな存在なのです。
そのため昆虫館では繫殖に取り組んでいます。
ヘラクレスリッキーの飼育(卵~成虫編)
卵~成虫へと無事に育て上げる為に大事なことが4つあります。
①幼虫も大きいのでとても大きなケースで飼う。
②幼虫が大きい分、エサとなるマットをたくさん食べるのでたくさんのマットが必要になる。
③海外の暖かい所に生息しているので、寒いときは暖める必要がある。
④蛹になるときにツノ曲がりに気を付ける。
特に④には注意が必要で、飼育ケース内に作った蛹室(蛹の部屋)では大きさが足りずにツノが曲がってしまう可能性があるのです。
そのためケース側面から観察し、蛹室らしきものが見えたら人工蛹室(人工的に作った蛹室)に移しています。蛹になるタイミングは大体分かりますが、同じ兄弟でも個体によって蛹になるタイミングに誤差があるため、早く蛹になる個体もいれば遅く蛹になる個体もいます。
他の虫も多く飼育しているので、いつの間にかタイミングを逃してしまうこともあり、常に注意していなければなりません。
でかい!
大人の手のひらでも覆ってしまうほどのサイズ感!
プリプリで立派な幼虫です!
日本のカブトムシとサイズを比べると4倍くらいはあるでしょうか。
写真のリッキーは127g、カブトムシは25gと体重は約5倍。
日本のカブトムシの幼虫期間が約10カ月であるのに対して、
ヘラクレスリッキーは幼虫期間が1年~1年半と長めです。
このサイズの幼虫が蛹になって成虫になれば、「それはでかくなるよね」と納得します。
こちらはヘラクレスリッキーの蛹です。
この子は少し小ぶりではありますがとても立派です。
ここでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、蛹が丸見えになっています。
自分で作った蛹室の大きさでは無事に蛹になれないと思い、私が人工蛹室に移しました。普段は園芸スポンジで作っているのですが、今回はマットを固めて人工蛹室にしました。
園芸スポンジを使った人工蛹室の作り方はYouTubeで紹介していますので、ぜひご覧ください。ただ困ったことに、園芸用スポンジの大きいサイズのものが最近100均に売ってないのです。一体どこへ行ってしまったのか…。帰ってくる日はあるのだろうか…。出来れば園芸用スポンジで作りたいと思っています。
蛹化するときに脱皮した抜け殻です。これだけでもド迫力ですね。
とても綺麗に脱いでいます。
卵から飼育しているヘラクレスリッキーたちの中で1番最初に羽化した個体です。かっこいいですよね!
この子だけ他の子よりも早いタイミングで羽化してきました。昆虫館で2021年12月5日に採取した卵から、2023年3月14日に無事に羽化した個体になります。オスにしては幼虫の期間が短めです。
ヘラクレスリッキーの飼育(成虫~展示編)
ヘラクレスリッキーの魅力の一つは何と言ってもその大きさです。世界最大級のカブトムシですが、個体によって大きさに差があります。成虫の大きさは幼虫の時にどれだけ大きくなったかによって変わってくるのです。
成虫になった後は展示することになるのですが、迫力と衝撃を感じてほしいので、飼育している中で一番大きな個体を展示するようにしています。
今回、羽化した個体の大きさを測ってみると145mm!いいサイズだと思います。
若干角が右に曲がってしまいましたが、さほど不格好ではないでしょう。
こうして羽化した個体はしばらく休眠をします。
休眠期間は羽化後に体ができあがるまで、エサを食べずにじっと動かなくなります。羽化後は体がまだ柔らかく、しっかりとできあがっていないためです。成虫になっても休眠期間は展示ができません。種類によって休眠の長さは変わりますが、ヘラクレスリッキーの場合3カ月ほど休眠するため羽化後はそっとしておく必要があります。その後、休眠期間が終わるといよいよ展示できるようになります。
何度も言いますがヘラクレスリッキーは大きいため、その分大きなケースで展示してあげる必要があります。大きいとケース内が寂しくなりがちですが、大きい止まり木をレイアウトして迫力を出します。そうすることでかっこよく展示できます。
こうして長い時間と苦労をかけて、ようやく皆様の前にお披露目できるのです。
今回はヘラクレスリッキーの展示の舞台裏について紹介しました。幼虫期間が長めであり、大型のカブトムシのため、育て上げることは簡単ではありません。卵から長い幼虫期間を経て、満を持しての展示となるヘラクレスリッキーは、2023年7月15日(土)~2023年8月27日(日)に開催される「世界のカブト・クワガタ展」にて展示予定です。
お越しの際にはゆっくりとご覧ください。
※ヘラクレスオオカブトについてはそれぞれを独立種として扱う論文もありますが、今回はリッキーをヘラクレスオオカブトの亜種として扱いました。