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私が最近出会った、似ている昆虫達3選。

私は5月の上旬に沖縄本島に行っていました。

沖縄に行ってきました!

沖縄は暖かく、本州では見られないサイズのチョウが飛んでいたり、色鮮やかな甲虫がいたり、大興奮の毎日でした。その中で、本州でも見たことがありそうな昆虫がいました。しかし、実際には沖縄などの南西諸島にしか分布していないはずの昆虫で、本州の昆虫によく似た昆虫でした。

昆虫は多様で様々な色や形をしています。ですがその中には、知らなければ間違えてしまう程、似たような見た目をしている昆虫も多く生息しているのです。

今回は似たような見た目をしている昆虫を、沖縄の昆虫から身近な昆虫まで難易度毎に分けたので、見比べていきたいと思います。


ゴマダラチョウと〇〇〇

まずは、似ているレベル.1のチョウの紹介です。

ゴマダラチョウ Hestina persimilis

ゴマダラチョウは北海道~九州まで分布しています。黒と白の斑模様をしているのが特徴です。冬を越した幼虫が成虫となる春型の姿は白色の割合が多く、夏に成虫となる夏型は黒色の割合が多くなります。樹液にも集まることがあるため、夏にカブトムシやクワガタムシを探していると、一緒に樹液を吸っていることがあります。

そのゴマダラチョウと見比べるチョウはこちら!

オオゴマダラ Idea leuconoe

その名の通り大きくなったゴマダラチョウと言ったような雰囲気です。同じ斑模様ですがゴマダラチョウよりも白色部が多く目立ちます。翅を広げた時の大きさが13cm前後であり日本最大級のチョウです。とにかく大きい!オオゴマダラは沖縄などの南西諸島にのみ分布していて、沖縄県の「県の蝶」にも選ばれています。
そして成虫の魅力だけでなく蛹の色が黄金色に輝くというのも特徴的です。

黄金色の蛹(橿原市昆虫館にて)
冬に訪れたからか、クリスマスツリーの飾りになっていました。

2種を比べた時の違いとして分かりやすいのはやはり大きさ。オオゴマダラのほうが圧倒的に大きいので大きさをヒントに見分けられるかと思います。

似ているレベルは低いですが、沖縄で見たオオゴマダラがあまりにも美しかった為、どうしても記事にしたくなってしまい紹介させて頂きました。

コクワガタと〇〇〇

続いて、似ているレベル.2のクワガタムシの紹介です。

コクワガタ Dorcus rectus

クワガタの中で一番身近で見つかりやすいのがコクワガタです。日本では北海道、本州、四国、九州などに分布していて、日本以外にも朝鮮半島、中国、台湾などに分布しています。意外と知られていないのが冬を越せるということ。カブトムシの成虫は夏の間にほとんど死んでしまいますが、コクワガタはそれよりも長く、成虫になってから約1~3年も生きることが出来ます。

冬のクワガタムシどこへいく?|竜洋昆虫自然観察公園 (note.jp)

コクワガタは昆虫が好きな人であれば、一度は見たことがあるのではないでしょうか?

そのコクワガタと見比べるクワガタはこちら!

???

さてこのクワガタはなんというクワガタか分かりますでしょうか?

正解はスジクワガタ(Dorcus striatipennis)です。
スジクワガタは北海道、本州、四国、九州、種子島などに分布していて、日本以外にも朝鮮半島、中国、台湾などに分布しています。小型のオスやメスの翅にスジがあるためスジクワガタと名付けられたと言われています。しかし大型のオスになるとスジがなくなる為、写真のスジクワガタにはスジがありません。ではコクワガタとどこが違うか分かりますでしょうか?


コクワガタとスジクワガタ

見分けるときのポイントとして分かりやすいのが大あごの形です。コクワガタはまっすぐ伸びる途中に内歯が一つあるシンプルな形なのに対し、スジクワガタは先端の方で一度窪み、内歯の幅が少し広くなっています。

住んでいる環境にも違いがあります。コクワガタは平地でも山地でも見つかる可能性がありますが、スジクワガタは山地の環境を好んで暮らしている為、平地ではほとんど見つかりません。山が近い場所ではどちらのクワガタも採れる可能性があります。小さなクワガタを捕まえた場合はよく確認してみてください。もしかしたらスジクワガタかもしれません。

スジクワガタは少し前にこんちゅうクンが捕まえてきました。
2024年夏に行われる世界のカブト・クワガタ展で展示予定です!

ハンミョウと〇〇〇

最後に、似ているレベル.3(MAX)のハンミョウの紹介です。

ハンミョウ(ナミハンミョウ) Cicindela japonica

美しい色合いの見た目から人気を誇るハンミョウです。ナミハンミョウとも言います。本州、四国、九州などに分布しています。土が露出したひらけた環境で見つかる事があり、近づくと素早い動きで逃げていってしまいます。近づくと、逃げて止まる、また近づくと、逃げて止まるという動きを繰り返すことから「みちおしえ」という別名があります。鋭い大あごと素早い動きで小昆虫などを狩る、肉食のハンターです。昆虫館に来る子供の中には、ハンミョウを見て感嘆の声を漏らす子供も少なくありません。それだけ人気のある、ポテンシャルを秘めた昆虫です。

そのハンミョウと見比べるのがこちら!

オキナワハンミョウ Cicindela okinawana

その名の通りに、沖縄本島、石垣島などの南西諸島に分布しているオキナワハンミョウです。生態はほとんどハンミョウと同じで見た目も瓜二つ。今まで見分けた昆虫達よりも段違いの難しさです。

ハンミョウとオキナワハンミョウ

見分けるときのポイントとはオキナワハンミョウの方が、頭胸部にツヤがあり、体形がやや細くなる傾向があるという点があります。斑紋にも多少の違いがあり、上翅の肩部後紋が小さく、中帯紋のくびれが少なくなりますが、個体によって変異があるようです。それでも分からず捕まえた場所も分からない場合は、交尾器の形状を見て判断する必要があります。

このオキナワハンミョウも沖縄に行った際に観察出来ました。夜に見つけたので、ツタや葉の上に乗って休んでいたところを観察し、追い掛け回すことはありませんでした。

沖縄で見つけたオキナワハンミョウ

ハンミョウ、オキナワハンミョウは2024.6.15現在、昆虫館にて展示しておりますので、ぜひ見比べてみてください。かなり難しいですが、本物を見た方が違いに気づけるかもしれません!(展示が突然終了する可能性があります。ご了承ください。)

おわりに

似ている虫達を、一度見ただけで完璧に見分けるのは難しいです。何度も観察して慣れていくことで、段々と見分けるポイントを掴めてくるものです。ポイントを掴んで簡単に見分けられるようになれると、自然観察がより楽しくなるかと思います。

参考文献

・藤田宏, 2010 . 世界のクワガタムシ大図鑑. むし社

・上野俊一・黒澤良彦・佐藤正孝, 1985 . 原色日本甲虫図鑑(Ⅱ). 保育社

・Fukuda, Y., Yamasako, J., Ogawa R. & Sakai, M. 2015. Review of the Japanese Species of the Genus Cicindela (Sophiodela) (Coleoptera, Carabidae, Cicindelinae) Based on the Characters of Internal Sac. Elytra, Tokyo, New Series, 5 (2): 269–280